「仮面ライダー!」
「おジャ魔女ドレミ!」
「おいおい、パパは新車情報をみてたんだぞ。チャンネルとらないでくれよ。」
三人で激しく言い合っているところへ、買い物に行っていたコメットさんとママが帰ってきました。
「牛乳買ってきました。あと二人のパワーパフガールズのシリアルも。」
コメットさんは買い物のビニール袋を、テーブルの上に置きました。
「あら、何を騒いでるの?」
二人は戻って来たママに、一斉に主張します。
「ツヨシくんが仮面ライダーみるのに、ネネちゃんがジャマするんだ!」
「違うよ!おジャ魔女ドレミをみたいのに、ツヨシくんがケチなんだよ!」
「いや、ボクがテレビをみていたら、この二人が…。」
パパのその言葉に、ママの顔が険しくなりました。
「あなた。まさか新車情報をみていたんじゃないでしょうね?」
「い、いや、そうじゃないよ。ニュースをチェックしていただけさ。あはは。」
しまったと思いながら、パパは必死に誤魔化しました。
新しくクルマを買うことに、ママはいい顔をしないのです。
コメットさんは目線の高さを合わせると、言い争っている二人に言いました。
「ケンカはしちゃダメだよ。公平にジャンケンで決めたら?」
ツヨシくんとネネちゃんの視線がぶつかり合います。
「よし、勝負だ!」
「勝った方が、好きなのをみるんだからね!」
でも、パパはちょっと困り顔。
「おいおい、もしかして、パパもしないといけないのか?」
二人はキッと睨みつけました。
「パパは関係ない!」
「そ、そんなぁ〜。」
不満でいっぱいの父親を無視して、二人は手を構えます。
「ジャン!」
「ケン!」
「ポン!!」
勝負の結果は…。
ツヨシくんがパー、ネネちゃんがチョキでした。
「ネネちゃんの勝ちー。」
コメットさんが手を上げて宣言しました。
「やったー!」
ネネちゃんが飛び跳ねて喜びます。
ツヨシくんはガッカリ。
「負けちゃった…。」
「残念だったね、ツヨシくん。でも決めたことだからね。」
「うん。ツヨシくん、男だもん。約束は守る。」
ネネちゃんはテレビの前に跳ねて行きます。
ところが…。
テレビの前には、すでにママが座っていました。
「あぁ…。イケメンぞろい…。」
ツヨシくんが気が付きます。
「あっ!仮面ライダーだ!」
「ママ、ずるい!ネネちゃんがおジャ魔女ドレミをみるんだよ!ジャンケンしたんだよ!」
ですが、ママの耳には全く届いてはいない様子。
ウットリした表情で、画面を食い入るように見つめています。
その隣にはいつの間にやら、ツヨシくんがチャッカリと座っていました。
納得出来ないのはネネちゃん。
「わぁぁぁぁん!ネネちゃんが勝ったのに〜!!」
コメットさんの腰に抱きついて、ワンワンと泣きだしてしまいました。
ですが、さすがのコメットさんも、どう言って慰めたらいいのかわかりません。
この藤吉家王国では、場合によってママさんが一番の権力者になることも珍しくないのです。
「ママなんてキライ!!ツヨシくんはもっとキライ!!あ〜ん!!」
ネネちゃんの心からの叫びも、テレビに夢中になっている二人には届いていません。
「仮面ライダーってかっこいいね、ママ。」
「ええ…。出て来るお兄さん達、みんなステキ…。」
そんなみんなから離れたところに、いじけたパパが立ち尽くしていました。
誰からも相手にされず、慰めてくれる人さえもいません。
「どうせオレは、孤独な一匹狼さ…。はは…。」
仕方がないので、パパは一人で朝ゴハンを食べることにしました。
たった今、ママとコメットさんが買ってきたスーパーの袋を探ります。
「あれ?ねぇ、ボクのコーヒーのパンは?」
ママがテレビから目を離さずに答えました。
「あ、ゴメン。買うの忘れちゃった。」
それを聞いたパパは、ますます落ち込みました。
「ふぅ…。コメットさん。ボク、もう少しだけ眠ってくるよ。後はよろしく…。」
それだけ言うと、パパは部屋を出ていきました。
コメットさんは少し心配になりました。
「パパさん、気分がよくないのかな?」
長い作品が続いたので、今回は短く。
実際に日常でありそうなネタを考えました。
仮面ライダーとおジャ魔女ドレミの時間が重なることはありえないんですけど。
2004年9月に加筆修正しました。
ていうか、アニメでもチャンネルを争う場面があったんですね。
これを書いたときは、まだ半分ほどしか観ていない状態だったので…。
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